渡り屋根のあるコートハウス

『家を建てる』ことを決意して設計から工事、そして引き渡しまで、この間これほど真剣に設計者、施工者の皆さんと取り組んだことはなかった、というよりも取り組む内容がこれまでと全く違っていて、私の達成感は実に大きいものでした。

『家を建てる』この決意には、私の父と母の存在が大きく影響しており、妻と共にこの大仕事に関われ、これまで色々とご指導頂いた方々に感謝し御礼申し上げます。

 

 

「家を建てよう・・・と思った時」

 父が2009年1月に他界し、住人が母だけとなった家は46年ほど経った鉄筋コンクリート造りです。内装は風呂も含め何度もリフォームをやって来ましたが、隙間風やサッシのガタつき、冬は特に冷たく寒く感じる風呂など、とても住みやすい家とは言えませんでした。

 

私たち家族はこの家から700mほど離れた所で会社事務所と自宅を併用した鉄骨3階建てに住んでいました。長女と次女の4人家族です。当時長女は大学2年生、次女は高校3年で受験を控えていました。

 

父が他界してから母一人での生活は寂しいだろうと思い、私は毎日のように母を訪ね一緒に妻と3人で食事をしたり泊まったりして、何か不自由してはいないかと過ごして来ました。

当時83歳の母ですから、一人分の食事を用意するにはどうしても品数が少なくなり易く、一人での生活を続けることは母にとって厳しく、不安でもあったので、父の初盆明け頃に「新しく家を建て同居しよう」と決心しました。

ちょうどその同じ頃、妻が友人から素敵なお宅があるという話を聞き、その際、藤田さんという名前が出たので恐らく私が知っている方じゃないかな、と少し驚きました。

藤田さんとは以前に面識は有り、一度、家の設計について話を伺おうと妻と話しておりました。私たちは紹介されたお宅へ早々に伺い、ご夫婦に家族のことや住環境研究所の藤田さんと色々なやりとりをしたことなど教えて頂きました。

木造2階建てのお宅では親と同居され、私たちと同様な家族構成であったので大変参考になり、住人の生活を細部にまで考えた「暮らしやすい家」だなと感じました。

 

「㈲住環境研究所 藤田さんと会う」 

その後、㈲住環境研究所へ出掛け、久しぶりに藤田さんにお会いし、そこでこれまで手掛けた数々の仕事を教えて頂き、住人の意向を酌みながら出来上って行く藤田さんの設計には何か温もりがあるなと感じました。

 

何より必要と思っていたのは、陽当たり、風通し、人に優しい、お年寄りに優しい、木造住宅です。鉄筋コンクリート、鉄骨など経験してきた私は木の温もりを欲していたのかも知れませんし、年老いた母が安心して暮らせる家、地震が来ても安心な木造が一番良いじゃないか・・・私の素直な気持ちです。

設計の話し合いの中で「分離発注」という言葉が出てきてその説明を聞き、施主が「家を造る」作業に加わる、関わることができる・・・面白そうじゃないかと思いつつ、自分は何が出来るのか不安な気持ちがありました。

この頃に、会社事務所を自宅と併設することにしました。いずれ事務所も移転する予定でしたが、藤田さんの設計ですべてお願いすることにしました。

 

年が明け、2010年いよいよ藤田さんと設計の話を進める所、浜松市のエコハウスモデル「きづきの森」木造2階建てを建築することに住環境さんの設計が選ばれ、これは私にとって良い参考となるので本当に良いタイミングだなと思いました。

2010年前半は、藤田さんが設計された家を7軒ほど拝見しとても参考になりました。

その土地の風景に合った家、ソーラーパネル、玄関・木製の扉、左官塗り壁、どれも取り入れてみたくなります。

その後、藤田さんから実務担当となる服部治代さんと鈴木栄里さんを紹介頂き、服部さんにはこの時から最後の最後まで家造りのことを手取り足取り教えてもらいました。

 

 

「いよいよ作業開始」 

2010年8月下旬に着工となり、いよいよ始まります。

施工業者さんの見積もり確認や、契約書の捺印など本当に多くの業者さんが関わっているんだな、と改めて感じました。

9月初めだったと思いますが、服部さんから「稲川さん、基礎の材木に備長炭の塗装をやりませんか」と言われ、「おっ、来たな!」早速21日から塗装作業の始まりです!しかし、その土台の本数を見ると「まずいな・・」一人では到底追いつかないと思い、妻に即連絡し手伝ってもらいましたが数が多かったので一日では終わりません。29日に上棟式を予定していたので、早く仕上げないと大工さん達に迷惑が掛かります。この時は服部さんにも手伝って頂いたことをよく覚えています。

上棟が無事済んだのも束の間、塗装作業は続き柱が終わると次はケナボード。

段々と塗装作業が多くなり、この頃には備長炭塗料の匂いが好きになりました。

火打梁のオイル塗りからナラフローリングペーパーかけ後クリアオイル塗り、この頃にはマイヘルメットを用意し足場を登り、梯子をかけ作業をします。

木材を取り付ける前に塗装しないと養生が必要となり時間が余分にかかります。

よって、大工さんと塗装・取り付け予定の確認をしながら早めに仕上げるようにしましたが、乾燥の時間も必要なのでなかなか進みません。

また併設している会社事務所にも床、棚板、扉、窓枠など塗装作業が待っています。

建具屋さん製作の自宅玄関扉はノンロットブラウン塗料、11月30日に袋井へこの塗料を持参して塗装をした後、久保田さん(建具)に勧められたこともあり、紅葉の綺麗な小国神社で参拝し工事の安全を祈願しました。

服部さんから「階段の塗装期限が迫っています」と連絡が入り、早くやらないと取り付けることになりそうと言われれば、これは大変だ・・・塗装用の服に着替え至急現場へ!・・・

ヘルメットをかぶり、タオルを首に巻き、塗料の付いた格好で作業していれば、とても施主には見えず新しい施工業者さんには塗装業者と間違われました。

でも、塗装職人のプロからお褒めの言葉や、またこの作業にはこういう道具の方が使いやすいとか色々とアドバイスを頂き、以後作業効率が上がり誠に感謝。

現場で外壁、内壁、漆塗りなどプロの作業を見ていましたが、職人の技術に見入っていました。

()武左工業の水野社長がこれを入れると雰囲気が変わるよ、と言われ、玄関横の壁にはガラス入りの左官壁、見事なものです。他にも左官による和室の壁・天井、リビングの壁、階段壁・・・カラーサンプルでは表現できない温もりのある色です。

 

「外構・植栽」 

2月に入ると外構、植栽の打ち合わせが始まりました。

外構の塀には家の外壁と同色の左官を取り入れ、景観がしっくりと馴染みます。

大瀬造園・堀之内さんが出した案を、藤田さん、服部さん、私達夫婦と5人で実物の樹を見ながら確認します。他に母の好きな紫陽花をお願いし、全体的にそれぞれがそれほど主張し過ぎず周りと調和の取れた植栽になりました。

空いている敷地に防草シートを張ると決めていたのは、以前の家で庭にニョキニョキと出てくるスギナなど雑草に悩まされ、毎年春先以降は草刈りに大変な思いをした為です。

樹の植え込みが終わってから、防草シート、テープ、ピン、ハンマーを使う張り方を教わり、3月初めから10日の引っ越しが済んでからも続きましたが、最後に大瀬造園さんがシートの上に砂利を敷いて私の作業が終了しました。

「シート張りは途中で投げ出すと思っていた」と、後で堀之内さんが言っていたのを思い出します。これまでやってきた塗装作業で、時間があるからといって一度に全部出来るわけでもなく、少しずつでも‘焦らず、こつこつ’とやることが大切だと痛感していたから、最後のシート張りまで出来たと思っています。

自分が作業をしたことで、デッキなどは半年に一度、通路の板塀も年に一度塗装し、植栽の手入れをしていて可愛い花が咲いてくると、自然と心が和みます。

樹木の疑問点などは大瀬造園・堀之内さんに連絡をし、時々確認に来て頂いたりしています。

 

「最後に」 

3月10日から新しい家で暮らし始めました。まだ寒く感じる気候では、FITz Solar Systemがほんのりとした暖かい空気で部屋全体を包んでくれます。

ガスを点けなくても暖かいお湯が出るなど、このソーラーは家族全員に好評です。

6,7月の梅雨時は左官の壁が湿気を吸収し、天気の良い時は2階の天井近くの窓を開ければ風が流れ、夏の酷な暑さから解放されます。

1階の床材は柔らかめでバリアフリー、母にも安心です。

母の希望で、部屋にはミニキッチンを用意し、部屋から日本間にある仏壇へ動きやすい導線、夜でも安心なトイレへの通路。

妻は、母にも使いやすいコンパクトなキッチン、地震にも安心な食器棚を選び、私もなかなか良く出来ているなと感心しました。

今は東京で暮らす娘たちも帰って来た時は、よくキッチンを使い料理を楽しんでいます。

また何よりも陽当たり、部屋の明るさ、風通しの良さ、木の温もりを満喫し、庭で愛犬と遊ぶことなど心から喜んでいます。

最初にお願いした私の希望をより素晴らしい形で表現して頂いた藤田所長、服部さん。

住環境研究所皆さんのご指導を頂きながら出来上がって行く「家づくり」、多くの施工業者さんと関わりながら仕上げて行く「家づくり」。

私にとっても良い思い出をつくらせて頂き、大変有り難く感謝申し上げます。

誠に有難うございました。

 

201211月記

 

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