石風呂のある家

夢を現実に、それは『スローライフ』

 

 まず最初に我が家の家族からご紹介いたします。我が家の主である私は42才B型、最近流行のメタボリックにはしっかりのってます。それから同じくB型42歳の専業主婦の家内と、最近はめっきり口を利かなくなった悪ガキO型17歳の息子の3人暮らしです。私は長男で両親と同居でしたが、どうしても自分の家を建てたくて、実家の近くに土地が見つかったため、購入し家を建ててしまいました。そこらへんもB型って気がします。

 

 土地が見つかったのでいよいよ家選びに段階になり、何処のハウスメーカーにしようかとマイホームセンターや新築の見学会に出かけてはいたものの、どれも似たようなものばかりで満足できるものはありませんでした。しかしながら新聞の小さな記事から建築家と作るシステムを知り、そこで今回お願いした住環境研究所の藤田さんと出会うことになりました。設計事務所にお願いすることは敷居が高いような気がしておりましたが、会って見るとそんなこともなく、本来建築家に向かって先生って呼ぶことは知っておりましたが、自分の家を建つのは建築家ではなく私が建つのであるという自分の考えを貫く為に、あえて「先生」って呼ばずに最後まで「さん」付けでつき合わせていただきました。でもこのスタイルが完成してみてよかったなとつくづく思いました。

 

 さて、いよいよ図面の作成に入ります。我が家の建築コンセプトは、 ①平屋であること ②広くて開放的なリビングであること ③寒がりな家内のために暖かな家であること  ④露天風呂であること、このほかにもありますがそれは小さなことなので割愛いたしますが、この4つが満たされば概ね90%は合格って感じでした。この段階ではまだ家の形も全く想像できず白紙の状態でしたが、あの藤田さんは意図も簡単に私たちのハートも打ち抜いたのでした。最初の打合せでほぼ希望を満たした平面図と小さな模型を作ってくれました。今まで想像もしていなかった形で驚かされたことを今でも覚えております。確かに平屋、そして天井高のある勾配天井の広いリビング。そしてリビングの南側はこれでもかと言わんばかりの全面ガラス窓。部屋には薪ストーブが配置され、床暖房とお湯採りを目的としたソーラーシステム。そして南側角地に設置された浴室。模型からも立体的に想像がつき、頭の中に自分たちの生活が描くことが出来始めてきました。これが夢実現への第一歩だった気がします。

 しかしながら、そこから上棟までの道のりが長かったような気がします。予算もさることながら、本当の意味での設計はここからが勝負でした。まずは平屋という条件は概ね合格でしたが、どうしてもは部屋の配置の関係で一部2Fにならざるを得ませんでした。結果、納戸上部を利用したオープンスペースは妻の書斎に、寝室上部の部屋は私の仕事部屋になりました。将来私の居場所?がなくなってもここだけは確保できそうです。

 そんなわけで、全体が緩やかな南勾配で少し高めの天井のおかげで広いリビングもあわせて手に入れることが出来ました。でもここでやっぱり設計事務所に頼んでよかったと思うことがありました。それはリビング南面のガラス窓の提案でした。リビングの南面は中庭を望む絶好のポジションにあります。おまけにその向こう側に見えるのは我が家の一部ではないですか。普通はお隣さんの家が見る位置に我が家の一部があるために、大窓にしてもプライバシーを守ってくれているじゃありませんか。正直凄いって思いました。おまけに幅7メートル高さ4メートルのガラス窓、柱の他に障害物はありません。実際に完成してみて、想像通り太陽の日は燦燦と降り注ぎ、明るく部屋の中を照らしてくれます。そして寒い冬の日でもこの家の形のおかげで、日中大窓を開けていても風はほとんど入ってきませんし、日が部屋の奥まで入ってくるので暖房は全く使う必要はありません。薪ストーブも日が沈んでから始動開始で十分です。本来床暖房の機能も持ち合わせたソーラーシステムですが、未だに床暖房を利用したことがありません。と言うより必要としたことがありません。それくらい冬でも暖かい家であることが我が家の自慢です。それでも冬の夜は妻と薪ストーブの番人をしております。暖かいことは言うに及ばず、ゆらゆら揺れる炎を見ながら、今日一日有った事を語り合ったり、ロッキングチェアーに揺れながらうたた寝したりと、日中の仕事の慌しさを忘れさせてくれるひと時を演出してくれます。おそらく藤田さんは我が家のこんな光景を想像しながら、図面を引いていたのでしょうね。広々とした開放的なリビングと、寒がりな妻の為の暖かい家は見事に希望を満たしていたのでした。

 

 但し我が家の大目玉「露天風呂」には合格点がなかなか出せませんでした。それもそのはず仕事柄出張が多く、出かけた際は無理をしてでも温泉を探して入りに行くほど温泉好きの私ですから、自分の家にも露天風呂を作りたいと言う強い希望は譲ることは出来ませんでしたから。ここで私が藤田さんにお願いしたことをお話しいたします。「藤田さん想像してください。風呂場は家の中ではなくて離れです。母屋から下駄に履き替え、石畳をカランコロン音を立てて歩いていくと離れに。そして昔ながらのガラガラって音がする扉を開けると籐の脱衣カゴが並んだ棚のある脱衣場があり、その向こうには綺麗に手入れされた庭が一望できる石で積み上げて出来た露天風呂が湯煙を上げ私を待っている。」こんなことを要求する私を藤田さんはどう思ったのでしょう。でも返ってきた言葉は「面白いですね」の一言です。初めて共感してくれる方にお目にかかりました。

 

 そこからが施主と建築家のコラボレーションの始まりでした。設計は出来なくてもデザインは出来る施主と、デザインは出来なくても設計は出来る建築家。二人三脚でこの夢物語を現実にするプロジェクトは始動したのでした。もちろん藤田さんもこんなお風呂は初めてのことでしたから、さぞかし不安だったに違いありません。でもこの風呂を作ることだけは我が家のメインプロジェクトでしたから妥協は許せませんでした。でも現実限られた敷地の中で離れの建築は不可能。そこで考えたのは脱衣場までの通路を石の飛び石の廊下にし、そこを下駄で歩けば離れへのアプローチに近づけられると。ガラガラ音がする扉は、インターネットで見つけた古民家の千本格子戸を使用し、昔ながらの真鍮のレール使いガラガラ音を再現しました。狭いながらも脱衣場は天井は焼き竹の天板を、床は籐の床を貼り、大工さんに脱衣籠を置くための棚を作っていただきました。そこまでは構想通りのものが形になってきました。しかしながら浴槽だけは石を積んだもの。最大の難関に直面しておりました。しかしながらTEAM「住環境研究所」には凄い4番バッターがいたものでした。左官担当の武佐工業の水野さんでした。「石は俺が積んでやる。いい顔した石を持って来い」その一言にさすがの私も脱帽。職人魂に惚れました。これなら任せられる。自分が選んだ石をこつこつと積み上げ、なんと見事な石風呂を作り上げてしまったのでした。水野さんに本当に脱帽、感謝の気持ちでいっぱいでした。狭いながらも植木屋さんの大瀬造園さんがお風呂に負けないように頑張って見事な坪庭を作ってくれました。浴室からは壁一面が開口部になりますので、まさしく露天風呂といえます。これこそ夢を現実にした瞬間でした。お風呂の作りも我が家の自慢ですが、普通の家の2倍近くある浴槽ですのでこの先のランニングコストを皆さん心配されますが、水は地下50メートルからくみ上げる地下水ですし、ソーラーシステムによって70℃以上まで温水が作られますので、冬場でもお天道様が出てさえいれば、光熱費は一切かかりません。こんなところでもエコな生活を実現しております。暖かいリビングもいいですが、二人で入れる大きさの浴槽ですから、今は時間が合えば妻と2人で入浴しております。そんな時は決まって窓は全開、四季折々の空気を感じながら、ゆっくり仲良くお風呂に浸かって一日の疲れを癒しております。我が家の夫婦円満にもかなり貢献しているものと思います。

 

 お風呂も夫婦円満にかなり貢献しましたが、実は我が家の建築の最中にはセルフビルドの部分もありました。少しでも安く上げる為に、妻と2人で休みの日に柱のワックスがけを行なったり、外塀用の板に塗装をしたり・・・。2人して腰が痛いだ、肩が痛いだ、ワイワイ言いながら何とかやり遂げました。これも今となってしまえばいい思い出になっております。そして元来大工仕事の好きな私は、薪ストーブ用の薪棚を見よう見まねで作ってしまいました。それも、毎日のように現場に通い、大工さんが材木を加工し組んでいく様も見て覚えたことで成せたことだと思います。

 

 家を建つことそのものも一世一代の大仕事であることに間違いありませんが、今思えば、例え夫婦でありながらこれだけ同じことに真剣に取り組み、これだけ長い時間を共有したことはなかったと思います。そして今なお、これがあるから夫婦仲良く居れること。今まではがむしゃらに働き、子供の世話に追われ、自分や妻や家族の本当の姿を見落としてきたり、見忘れてきておりましたが、この家に住むことによって、それを気付かせていただいたことです。これからはもう少し心にも余裕ができるのではないでしょうか。またこれによって藤田さんがよく言う「スローライフ」が手に入りそうです。しばらくお財布には余裕が出来ませんが、心と身体にはお金に変えられない余裕が出来ました。なんとなく本当の幸せが見えてきた気がします。

 

 夢を現実にし見えたこと、これは『スローライフ』ってことなのかな・・・。これからの人生がすごく楽しく幸せなものであるように、我が家とともに生きていきたいです。

 そして、我が家の幸せつくりにご協力いただいた皆様への感謝の心も忘れずにいたいと思う今日この頃です。

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