街の家

2 自然のエネルギーを活用したローインパクトな住宅

①fitzソーラーシステムの導入
 1・2階ともこのシステムを導入したことにより,太陽熱を利用したお湯取りと床暖房が可能となりました。不凍液を媒介として太陽熱を取り込むfitzソーラーシステムは,循環チューブを壁体内に配管するため,居室空間設計の自由度が増します。その結果,LDKと両親居室及び寝室のある2階建て部分と主寝室や子ども部屋のある3階建て部分とを“合体”させることができ,3階屋根で集めた熱エネルギーを2階建て部分の床暖房で利用することが可能になりました。

 実際の使用感としては,夏場の好天時なら貯湯温度が70℃を下ることはほとんどなく曇天時でも50℃くらいまでは上昇するのでガス料金も基本料金程度(8月では,僅か1000円+αでした!)で済みました。冬場も床暖房によってどの居室(トイレ・風呂場脱衣室に至るまで!)も「寒くはない」程度の室温がキープでき,なにより“裸足”で過ごせることはこの上のない喜びでした。
②室内の風の通り道を意識した間取り及び窓配置
 fitzソーラーシステムの機能を補完する意味で,室内の風の通り道を意識した間取りと窓配置の工夫をしました。

・階段室…居住スペースのほぼ中央に階段室を設け玄関~3階までを吹き抜け空間としたために,玄関や1階勝手口,2.5階ベランダサッシから取り込んだ涼風が,踏み板のみの階段(2階~3階)の間を通って,各フロアに供給され,最後には各フロアの暑い空気とともに3階天井に設けられたルーバー窓や雨滴感知型自動開閉トップライトから排出されます。冬場は玄関の内障子戸や勝手口室の引き戸,2.5階ベランダサッシ,3階天井のルーバー窓を全て閉めることによって,暖かい空気は室内循環し各部屋の暖かさを極力逃さないようにできます。特に2.5階ベランダ前の階段踊り場は,夏場は涼風が吹き抜け,冬場は陽光あふれる“一等地”。ママゴトしたりお絵かきしたり…娘のお気に入りの場所でもあります。

・1階両親居室及び寝室…室内の戸が全て引き戸のため,必要に応じて開放すれば部屋の東・南・北に配置した窓や西の出入り口(その延長正面には玄関室に設けたルーバー窓がある)を風が吹き抜けます。また,居間と寝室を間仕切る内障子戸の上部には,以前住んでいた住居の透かし彫りの欄間をはめ込んであるので,たとえ内障子戸を締め切ったとしても部屋の上部では空気の循環を妨げません。なによりもこの透かし彫りは押入下の化粧柱とともに,両親が苦労して建てた以前の家屋の“忘れ形見”であり一家繁栄を願うシンボルです。
 両親居室は居住空間として唯一ルームエアコンを設置してあり,外気温が30℃を超えるような暑い日には運転するようにしていますが,通常は自然風とfitzソーラーシステムの暖房によって一年中,高齢者に優しい空間となっています。
・2階フロア…LDK及びワークスペース,風呂場,和室の各部屋は1階同様,室内の戸が全て引き戸のため,全て開放すれば丸々“1ルーム”の大空間となります。このフロアも東西南北全ての壁面に窓や開口部が設けられているので全方向から風を取り込むことが可能です。なおfitzソーラーシステムによる床暖房が及ぶのは和室の手前までなので,冬場は和室の襖戸を閉め室温のロスを極力防ぐようにしています。

・2階LDK…2階LDKは吹き抜け空間でその一部が3階ホールと開口部で繋がっていて,夏場はLDKに吹き込んだ涼風を3階部分に,冬場はfitzソーラーシステムにより暖められたLDKの暖気を3階フロアに供給する役目を果たしています。更に,この吹き抜け及び開口部は,LDKの空間をより広々と感じさせるとともに,それぞれが違う階のフロアにいても互いの“気配”を感じながら生活することができ,家族同士の“繋がり感”“連帯感”の醸成にも大きく寄与しています。
・3階子供部屋及び主寝室…このフロアも1・2階同様,各部屋を間仕切るのは全て引き戸とし,東・西・南・北全ての方向から風を取り入れるよう窓配置を考えました。更に3階フロアは,上述したように2階LDKの開口部を介して夏場の涼風や冬場の暖気を取り込むことができ,特にエアコン等の“強制的な空調設備”を必要としないのは“何より”です。

 しかし,各自のプライバシー(特に“生活音”対策)を考慮して,南側の子供部屋と北側の主寝室及び箪笥部屋との間に廊下を通したので,各部屋の引き戸を閉めると特に南北間の風通しが悪くなってしまうおそれがでてきました。そこで,子供部屋では小屋裏収納空間の北壁面にルーバー窓を配置することによって南側のベランダから取り込んだ風が北側にぬけるようしにしました。一方,主寝室及び箪笥部屋と小屋裏収納空間とは開口部で繋がっていて,引き戸の開閉によって室内の熱気が北側ルーバー窓からぬけるように考えました。この結果,全ての窓や開口部を開放しておけばたとえ「熱帯夜」であっても適度な風の流れを体感しながら“暑苦しくなく”寝ることができます。また,冬場は戸外に面した窓や開口部を全て閉じることによって室内の暖かさを保ちながら“寒くはない程度”に眠ることができるのは言うまでもありません。 

③雨天時でも開放可能な窓サッシの選択と庇効果
 ②で述べた窓サッシを選択するのに最も留意したのは,雨天時でも開放しておけるものかどうかです。いくら風通しを考えて窓や開口部を配置しても,それが雨の降り込みをおそれて閉じざるを得ないものであれば意味がありません。そこで,窓幅がそれほど広くない箇所はルーバー窓を,引き違い窓のようにある程度窓幅がある箇所には,目隠し可動ルーバーを設置しました。また,庇の出を長めにしたりオーバーハング部分を設けたりして,その雨よけ効果にも期待しました。
・1階両親居室及び寝室…南側のベランダサッシの前は2階LDKから広がるベランダ下部がちょうどオーバーハングの役目を果たし,かなりの降雨でも室内に降り込まれることなく網戸のままで生活できます。また,採風タイプのシャッターを採用しある程度の防犯効果も期待しつつ採風できるように考えました。東・北の窓には,こちらもある程度の防犯効果(もちろん,メーカー側は保障しているわけではないので,あくまでも,外見上の“気休め?!”の範囲で!)何れも目隠し可動ルーバーを設置しました。その他のルーバー窓には,面格子(こちらも外見上の“気休め”程度の範囲で)を設置しました。

・2階LDK…様々な機能と形状をもった窓サッシを配置してあるので,さながら窓サッシのショールーム?!の様相を呈している感も無くはありません。しかしながら,それぞれのサッシにはそれぞれの意味があり,何れのサッシにもたいへん満足しています。特に,LDKの東壁面上部に設けた内倒し窓は屋根庇のすぐ下に設置したので,かなりの降雨でも開けっ放しにでき,採風・廃熱効果は絶大です。また,両袖辷+嵌殺タイプの出窓は隣家の外壁が迫っていてあまり通風が期待できない東側にあって,全開すれば南北方向の風を実に効率よく取り込むことができます。更に言及したいのは,この両袖辷は僅か10㎝程度開けるだけでも庇効果と相まって降雨の心配なく,ある程度の通風が確保できる点です。キッチン周りは全て型ガラスのルーバー窓なので,周囲の視線も気にすることなく採風が可能です。南のベランダに面したサッシは,極力開口面積を“稼ぐ”べく3枚建てタイプの引き違い戸にしましたが,ベランダ上の庇をかなり長くとったので,急な降雨でも慌てることなく対処できるし,もちろん小雨程度なら開放してあっても差し支えありません。
・2階和室及び脱衣室…この2室は何れも坪庭を配したベランダに面していて,このベランダの上部には3階子供部屋がオーバーハング状に配置されているので,1階両親居室と同様,降雨の心配なく採風できます。実際に,脱衣室の採風勝手口ドアと和室ベランダサッシ+目隠し可動ルーバーを配した窓サッシの網戸を介して吹き込んでくる風は雨天時であっても心地よいものです。 
・3階書斎及びホール…東面の片流れ屋根(2階LDK上部)の“付け根”に当たる壁面部分に内倒し窓を配置しました。こちらは2階LDKの内倒し窓とは違い上部に大きな庇があるわけではないので,あまり激しい雨の時には閉めざるを得ませんが,窓高があまり高くないのとアルミ製のユニット庇をつけたことにより,小雨程度なら開放し続けることが可能です。

 ・3階子供部屋及び主寝室…子供部屋ベランダサッシ以外には,目隠し可動ルーバーを付けました。目隠し可動ルーバーは,ワンタッチで“全閉”でき,台風のような激しい風雨のときには雨戸の代わりにもなってとても便利です。3階屋根の庇を深めにとってあるので子供部屋のベランダサッシも降雨による開閉にそれほど神経質になる必要がありません。

 

(※上述した②~③による快適さについて,お施主様から頂いたメール文を原文のまま引用します。)

住環境研究所 服部さんへ 

 鉄骨造家屋の暑さへのご心配ありがとうございます。実は両親居間には唯一エアコンを設置してあり,必要に応じて稼動させています。その他の居室については,室内気温こそ29℃~30℃というときもありますが,どの部屋も四方からの風通しを考慮してあるので体感的にはそれほど暑苦しくはありません。これは決して“やせ我慢”ではなく,率直なところの感想です!!  そこで,今回は我が家の風通しの良さスポットbest5を紹介します。
第1位;2階システムキッチンのシンク前(勝手口及びその上部のルーバー窓+東と北のルーバー窓を通り抜ける風により,調理時の熱さえも効率よく廃熱される,我が家では“穴場”的スポット)
第2位;2階LDKの中央部のダイニングテーブル南西角(ここは言わずと知れた風の“十字路?!”電動車椅子の母の定位置)
第3位;1階両親居間(北・東・南側サッシと玄関及び勝手口サッシを網戸にして解放すると,やはりここも風の十字路になり,結構涼しくなります。さらに,南側サッシ越しに見える植栽によって気持ち的にも涼感を誘われます。)
第4位;2階和室(雪見障子と北側の床の間の明かり取り障子を開放することにより,ここも風抜けがよく我が家の“お昼寝スポット”です。また,夜は坪庭の灯りをボーっと眺めながらの“寝酒?!スポット”でもあります。)
第5位;2.5階階段踊り場(屋上緑化したベランダから吹き込む風と玄関~階段ホールを吹き抜ける(吹き上がる?)風の相乗効果で,狭小部ながら堂々の5位入賞?! 下の娘はここに腹這いになってよく“お絵かき”しています。私は,ここの階段の途中に座って歯磨きするのが好きです。
同立第5位;3階寝室(西側に設けた雨よけルーバー付きの地窓とロフトに設けたルーバー窓に繋がる開口部によって,明け方の涼しさに思わずタオルケットに身をくるむ日も少なくありません)
“番外編”として,北側からの風を取り入れるために各階トイレの戸は使用時以外は開放してあります。これも引き戸にしたことの効用だったと思います。 要するに,「街の家」は夏の暑さにその間取り上,かなりの部分で対応できている(これには,吹付け式断熱材~アイシネンでしたっけ?~の効果も忘れてはならないとは思いますが)と言うことだと思います。やはり長いことかけて吟味していただいた“甲斐”があったってことですね。 本当にありがとうございました。

2006.8.8

④ベランダの屋上緑化
 1.5階店舗上のベランダが我が家では唯一の“陸屋根”部分です。fitzソーラーシステムの影響下にない店舗部分ではエアコンによる強制空調をせざるを得ませんが極力エネルギー消費を抑えるために,このベランダを緑化することを考えました。浜松市では屋上緑化推進のために申請者に芝生を支給する事業を展開していて,我が家の屋上緑化に際してもこの制度を利用しました。屋上緑化の効果は,はっきりと階下の店舗の過ごしやすさ(冷房のようなひんやり感ではないにせよ外気温に比して間違いなく「暑くない」ことが体感できるほどの効果!)に表れていて,空調費の節約に一役かっているようです。また,ベランダの天然芝は視覚的にもたいへんな“癒し効果”があります。芝生の上に芝生保護材を敷き詰めたので,このベランダは単に眺めるためだけのものではなく,人の出入りを容易にし,好天の日には物干し場として,周囲から覗かれにくい特性を活かして折り畳み式のベッドを配置すれば日光浴場として等,多目的に使えるスペースに“進化”しました。

⑤自然光による室内採光
 室内に風を取り込む仕組みとしてこれまで述べてきた窓サッシの配置は,同時に室内の採光にも大きく貢献しています。そこでここでは,これまで述べてこなかったFIX窓による採光効果ついてふれたいと思います。

 FIX窓による採光効果の最も大きな恩恵を受けているのは2階LDKです。ここは上述したように吹き抜け空間としたことにより南面と北面の上部にそれぞれ直角三角形状の大きな開口部を設けることができました。そこでこの開口部に対し北面には磨りガラスの,南面のそれには透明のFIX窓をそれぞれはめ込みました。これにより特に北面の磨りガラスを通して日の出~日の入りまで1日を通して常に柔らかな光が室内に注ぎ込み,日中であればほとんど照明器具のスイッチをONにする必要がありません。南面のFIX窓は透明ガラスで本来なら強烈な直射日光が射し込んでくるはずですが,上述したようなかなり長めの庇が,夏場の高高度の太陽光を適度に遮ってくれています。また,夜ともなれば街灯や周囲の高層建築の灯り,或いは月明かりさえも,この窓を通して室内に注がれるために,LDKを一変してムーディな雰囲気の空間に様変わりさせるのに役立っています。1日を通して時間的にも人数的にも最も人が居る場所であるLDKで,照明器具のために消費される電力が抑えられることの効果はたいへん大きなものがあると思います。

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