街の家

5 新しい街の空間に“馴染む”外観及び植栽
 我が家が建っている地域は,大規模な土地区画整理事業によりリニューアルした街区の東の入り口に位置します。周囲には中・高層のマンションやオフィスビルが建ち始めた,所謂“街なか”です。こういう場所にあってまず考えたことは,その日照時間のことも考えて少なくとも3階建て以上の高さが必要であろうということでした。しかしながら「単なる立方体を3層に積み上げただけの構成にはしたくない。」「かつての宿場町の入り口だったことを考えると外観は“和モダン”な感じにしたい。」「周囲からの視線を気にせず,太陽光や風を存分に取り込みたい。」「区画整理事業によって,アスファルトやコンクリートによる舗装面積が増えた地域にあって,誰もが思わず足を止めて『ホッと』できるような植栽空間がほしい。」など,要素によっては互いに相容れない条件もありこれらを融合させてデザインするのは至難の業であったろうと思います。
 以下に外観上,特徴となる空間やデザインについて述べます。
①多目的に使える店舗スペース  
 店舗の主たる使用目的は家内の化粧品販売及びエステティックサロンです。エステをしているところは人目からはずし,その後のひとときはジャズでも聴きながらゆったりとコーヒーを飲んだり談笑したりしたい~そんな空間を第一にめざしました。また,今の勤めを定年で退職した後(まだ,15年もある!)は,喫茶店経営をしたい~しかしながら,当面は不意の来客や職場の仲間たちとの懇談の場としても使っていきたい。こういった多用なニーズに応えるために,1階店舗中央にはサペリの一枚板を加工したテーブルを配置しました。テーブルの端には水栓とシンク,暖め程度の簡単な調理のために電磁調理器を付設しました。これによって,ある時はコーヒーや酒類を嗜むカウンターとして,またある時はミーティングテーブルとして使用しています。一枚板の“両耳”をそのまま残して加工してあるカウンターテーブルは,それ自体オブジェであり,1階店舗を非日常空間として演出するのに充分な存在感を示しています。また,この空間は,外部から土足のまま出入りすることができることも多用な使用目的に対応できる要因だと思います。
 エステルームは1階店舗を半階ほど上がった1.5階部分にあります。ここは,手すりも兼ねた間仕切り壁で外界の視線を気にすることなくエステができるようになっています。エステルーム下の0.5階部分は丸ごと収納スペースで店舗,居住スペース双方からの出入りができ,在庫の保管や納戸として使われています。

②縦と横のライン及び白と黒を基調とした統一感のある外観
 外観を特徴付けるのは黒色のガリバリウムを使った立ちはぜ葺きの縦ラインと白色のALC板の横ラインです。そしてシルバーグレー色のサッシや笠木がアクセントとなって開口部を引き締めています。また,屋根の傾斜は原則的には4.5寸勾配として全体として統一感のある外観をめざしました。その結果,南東角や南西角からの外観が色・形のバランスがとれていて特に美しいと思います。

③見せて隠す~都市型プライバシー保護術
・玄関ポーチの吹き抜け空間…前述したように土壇場で風呂場の位置を玄関ポーチ上に変更した結果,風呂場の南面と1階店舗の北面,1.5階店舗の西面で構成される「コ」の字状の吹き抜け空間が生まれました。この空間は西面に何も施さないとやはり外部から浴室の様子が見えてしまうので,サッシと同色のアルミ製縦格子を設置しました。縦格子の効果は絶大で外部からの視線は遮りつつ,光と風は充分に取り込むことができるので,特に夏場には浴室の窓を全開にしての入浴やシャワーが可能です。更にこの縦格子は,外観上の縦ラインを強調する意味で大きなアクセントとなっています。

・1階店舗及び両親居室前のファサード…1階店舗の東及び南面は全て透明ガラスです。そこで,この空間を適度に見せながら内部の様子は有る程度隠すためにRC打ちっ放しのファサードを設けました。この壁の両端から50㎝ほどのところに20㎝幅ほどの縦スリットを入れ壁の圧迫感を和らげました。両親居室の前庭にも同様のファサードを設けることにより,南面道路からの外観に奥行き感をもたせることができました。また,このスリットの効果も良好で,部屋の中からは外部の様子が有る程度わかるが逆に外部からは部屋の様子をそれほど見ることができないので,ガラス張りの店舗内にあっても開放的な雰囲気は損なうことなく落ち着いて談笑できる空間をつくりだしています。

・坪庭の景色だけを切り取る雪見障子…2階和室前のベランダに坪庭をしつらえました。ベランダの手すりに沿って竹囲いを施しましたが,手すりの向こうには近隣の中高層マンションやビルの姿が視界に入ってきてしまいます。そこで,和室から坪庭の景色だけを楽しめるように南面サッシの内側に雪見障子を併設しました。これによりベランダから見える景色の中で坪庭のそれだけを切り取って眺めることができ,併せて外部からの視線は有る程度カットすることに成功しました。特に秋の夜長などは,薄明かりに照らされた坪庭の様子を眺めがら杯を傾ける楽しみができました。

④コンクリートとアスファルトで固められた街なみに潤いを与える植栽
 シンボル道路沿いは歩道の幅も広く公共の植樹やベンチの設置などにより整備されていますが,我が家の面している道路は一般の区画道路なのでそういった施設はほとんどありません。我が家のレイアウトも駐車スペースを確保するために建物が建っている以外の空間はコンクリート舗装を施しています。そこで,せめてその一角だけでも植栽を施し,家族のみならずこの街区を行き来する人々にとっても一服の清涼剤となるような空間演出ができないものかと考えました。樹種としては,葉の色が変わったり花を咲かせたりして1年を通じて何がしかの変化が楽しめるような樹木の組み合わせで選定しました。その結果,店舗へのアプローチを中心に緑の空間が形成され,我が家を訪れる人々を優しく出迎えることができるようになりました

 以上,我が家の特徴について5つの観点から述べてきたましが,何れの観点からもその言わんとするところは『大・満・足』の3文字ですし,我が家の建築に携わってくれた設計士さんや施工業者さんらなど全ての人々に対する『感謝』の気持ちです。
 我が家での実例が,今後新築や増改築を考えている方々にとって何らかの参考になれば幸いです。

 

2006年8月 記

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